vol.18 ゲームクリエイターという仕事(1)
- 2007-06-27(Wed)
- はたらき方
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絵を描きたい、どんなものにも面白さを見つけたい。
その想いがゲーム制作の原動力となっているゲームクリエイターの話
【インタビュー】
樋口雅大
さて、今回から2回にわたり、株式会社インテリジェントシステムズのゲームクリエイターである樋口雅大さんと鈴木浩信さんに登場していただきます。こちらの会社では、任天堂のゲームソフトを開発しており、お二人とも、みなさんがよくご存知のゲーム制作に関わっているんです。ブログをご覧になっている方の中にも、ゲームを創る仕事に興味のある人はいらっしゃるのではないでしょうか?それでは、お二人の話を伺っていくことにしましょう。まず最初は、グラフィックを手がける樋口さんのお話からどうぞ。

─ゲーム会社というのが自分のやりたい職業であり、自分の条件に合致する仕事なんだって、急にカッとひらめいて─
■樋口さんは大学では映像の勉強をされていたわけですが、就職先にゲーム開発会社を選んだのはどうしてだったんですか?
樋口:僕がゲーム関係の会社に入るきっかけとなったのは、就職関連の雑誌だったんです。偶然見たその雑誌に大手ゲーム会社の募集の告知があって。それを見るまでは、僕自身はゲームというものに、全然興味を持っていませんでした。
というのも、ゲームそのものは自分の周りにたくさんあって僕もそれで遊んでいたけれど、それを誰かがつくっているという感覚が全然なくて。
例えば漫画ならタイトルと同じように作者名が前面に出るけれど、ゲームで制作者が表立って出てくるものってほとんどなかったし、最後のエンドロールだって映画と同じようにサラッと流れていって、目に残るようなものではありませんでしたから。だからゲームをやって楽しかったなぁというところで終わってしまって、その裏にある開発者の存在まで意識が及んでいなかったんですね。
僕自身はすごく絵が好きで、絵を描きたいという想いが強かったので、絵を描く仕事には就きたいと思っていたんです。しかし、どんな絵を描きたいのか、またどんな絵を描けばいいのか漠然としていて。だから就活の最初の頃は出版関係の営業とか、そういった職種をちょこちょことまわってましたね。
そんな時にその雑誌を見て、「これって僕のやりたかった仕事なんじゃないか」って思ったんです。ゲーム会社というのが自分のやりたい職業であり、自分の条件に合致する仕事なんだって、急にカッとひらめいて。それから就活もガラッと方向転換して、ゲーム会社一本に絞って受けまくったんです。
■それではゲーム会社に行こうと思ったのは、就活を始めてからだったんですね。
樋口:そうですね。絵はそんなにうまくはなかったんだけど、小さい頃は広告を見るのが好きで。というのも広告の裏が白いものを見つけるとすごく嬉しくって、いっぱい落書きしてね。その時は漫画のキャラクターなんかを描いたりしていて、「将来は漫画家になるぞ」とか、「アニメーターになるぞ」って夢はあったけれど、実際にその道に行くのはすごく難しくて。
そっちの世界の現実が見えてくると、「もしかして自分のやりたいことじゃないんじゃないか」、「自分には難しいんじゃないかって」気が引けていたところがありました。それがその雑誌には企業から門戸を開いていて、受ける分にはどんな人でもOKですよってオープンな状況があって。だから見た瞬間、「あぁ、これだよ」って(笑)。
■樋口さんの頭には、まず「絵が描ける仕事」というのがあったけれど、自分では何が描きたいのかわからないという状況があって、そこでその就職情報誌がきっかけで目覚めたと。
樋口:絵は描きたいのに、何を描いたらいいのかわからないという悶々とした状況で。でも就活の時期はどんどん迫ってくるし。だからとりあえず、こんなところも受けてみよう、あんなところも受けてみようって受けてみるんだけど、担当者には僕の迷いが見透かされていてね。「キミってこういう業界には向いてないんじゃないの」って言われたりして(笑)。「いや、でも頑張りたいんです!」って話はするんだけれど、自分自身でも確かに違うと言われたら違うような気がするし・・・。
そんな違和感を感じながら就活していたのが、パッと開けた感じでした。だから、あのまま就職情報誌を見なかったら、どこかの会社で営業をしていたかもしれませんね。
■そうやってゲーム会社を受けまくったなかで、どうして現在のインテリジェントシステムズさんに決められたんですか?
樋口:一言で言ってしまえば、一番最初に受かったから。もちろん、不採用だったところもあったし、結果待ちや面接待ちという会社もいくつかあったんだけれど、そのなかで一番最初に採用が決まったところだし、それならここでお世話になろうと。
■ある意味、男らしい決断ですね(笑)。迷いはなかったですか?
樋口:そのときはあまり迷いはありませんでした。勢いだけだったと思います(笑)。とにかく、「やったー!ゲーム会社に受かったぜ!よし、ここだっ!!」って気持ちだけで決めたのがこの会社に入るきっかけだったんです。

─ゲームってキャラクターと背景だけ描いていたらいいんじゃないのって思って入ったんですが、実際はそうじゃないってことに気がついて─
■絵を描きたいという想いがあってこの会社に入られたわけですが、最初から思い通りに絵を描く仕事に就くことができたんですか?
樋口:デザイナーとして入ったので絵を描くチャンスは最初からあったんですけれど。絵と言っても紙に描くわけではなく、パソコン上で点を打っていくいわゆるドット絵を描いていくんですが、これが苦労しましたね。今まで全く経験したことがない描き方だったので。自由に描いているように見えて実際は色数や絵の大きさ等、すごく多くの制限の中で描いているんですよ。
それにパソコンを全然知りませんでした。当時はまだウィンドウズもなく、先輩から「これ読んどけ」とMS-DOSの本を渡されて。とりあえず10個の単語を覚えたらなんとかなるからって(笑)。一夜漬けで覚えたり、手探りでやってみたりと大変ではありましたが、いろんなことを覚えるのは好きだったんで、それはそれで楽しかったですね。
本を読んでいるとなんとなく理解できてくるんで、それでわかったドット打ちを一生懸命やってました。最初はすごい下手くそだったんですが、3ヶ月後ぐらいには「お前、ドットがうまくなったな」なんて言われて。「実は裏では、お前は下手だなって笑っていたんだよ」なんて先輩の言葉にショックを受けたんですが、ショックと同時にそういう風に言われるのは自分が上達した証拠だと。そう思うと嬉しくて、「そうだろ、うまくなっただろ」って思いながらやってましたね。
これは今でも新しく入ってきた子にはよくあることなんですけど、ゲームというのはキャラクターと背景が組み合わさってできるんですが、実際は文字を打ったり、ウィンドウの情報画面であったり、爆発とかのエフェクトであったり、フォントを作ったり、画面の中にある全てのものを制作していかないとダメなんですね。
ゲームってキャラクターと背景だけ描いていたらいいんじゃないのって思って入ったんですが、実際はそうじゃないってことに気がついて、それにすごい衝撃を受けた覚えがあります。
最初は「文字なんて打てないよー」と怖じ気づいたりしていたんですが、やってみると制限がある中の作業というのが逆に楽しくて。これは面白いなと。今まではキャラクター!キャラクター!キャラクター!とそればっかりだったのが、エフェクト作るのも楽しいし、ウィンドウ作るのも楽しいし、文字を打つのも楽しいって。こうやったらきれいにできるじゃないかっていう新しい発見がどんどんあってね。
ゲームというのはプログラムの集合体なので、グラフィックでもここをこういじるとこんな効果がある、なんていう発見があったりするんです。それがわかると、「これは、おもしれー!!」って。そういうことを見つけるのがすごく楽しくて。
最初はキャラクターのことしか頭になくて、それが全然違うんだよってカルチャーショックを受けるんだけど、覚えるのがすごく楽しい時期だったから、どんどん吸収していって、どんどん仕事したいって前向きな気持ちで仕事をしていました。

─何でも面白いやって興味を持つことができる好奇心を持っている人が向いている仕事─
■自分でゲームを作ったことのある人ならゲーム制作の過程もわかっているんでしょうけど。そうじゃないと自分がキャラクターを生み出してゲームにしたいって思って入ったのに、実際は地道な作業ばっかりで思っていたのと違う!ってギャップを感じることってないのかなって思っていたんですよ。
樋口:これは性格と言ってしまえばそれまでかもしれませんね。必要なスキルとしては、ゲームはいろんな要素の集合体であるので、もちろん技術も必要なんだけれど、協調性であったり、ずっと続けていくならば「なんでも突っ込みたがる好奇心」が大事。何でも面白いやって興味を持つことができる好奇心を持っている人が向いている仕事なんじゃないかなって思います。
実際にエフェクトだけを創る絵なんてあり得ないんです。そこでいろいろな担当をして新しい発見が起きるのは当然のことだし、これからも絶対そういうことはあると思うんだけれど、それを楽しんでできる人というのが、ゲームクリエイターとしてやっていく条件になるんじゃないかなって思いますね。
■最初は下手だって言われながら、ドット絵を描くことから始まって、現在に至るまでいろんなゲームの制作に携わってきたと思うんですが、その歩みを振り返ってみて、ご自身はどう思われますか?
樋口:現在があるのはこれまでの結果でもありますし、僕個人としては、こんなことを言うと会社の人に怒られるかもしれないけど一作業者でもありたいなと思っているんです。長く仕事をしているとゲーム制作の仕事だけじゃなく会社的要素…、例えば入社希望者の面接官であったり、ゲーム制作に入る前に予算の認識など、そういったことを色々勉強させてもらっていくことで自分ができる範囲でそういう仕事も楽しいかなって思ってます。
元々、知りたがりですから、これまでタッチしなかった部分を知るのも面白いんですよ。ある意味、いろんなところに楽しさを見つけていくことが重要なのかなって思いますね。
この仕事は本当に楽しくてやってきたわけですが、しかし時には挫折することもあるんです。たとえば僕はグラフィックを担当していますから上司に僕が描いた絵を見せるんですけど。「こことここがダメだ」って言われたとすると、その部分を直してまた見せる。すると今度は「全然ダメだ、直ってない」って。
その修正項目が理解できるものならいいけれど、何を言っているのかすらわからないってことも(苦笑)。相手が何を求めているのか全然理解できなくて、それで悩むこともありました。絵ってすごいしんどいなぁと思ったり、僕より上手い人もどんどん入ってくるんで、プレッシャーを感じることもあるし。
そういった中で思ったのは、絵の一部分が悪いということではなくて、ゲームの中でその絵(キャラクター)がどんな役割を担っているのかということを考えなければならないということ。単に修正するのではなく、一歩引いたところで、全体を見るという視点が必要なんだってね。その一歩引いた視点というのは、自分のポジションや、どういうものを創っていかなければならないのかを再確認するためには必要なんです。
だから、話は半分だけ聞いて。もう半分はもう一歩下がって、どういうことを狙っているのかを理解する努力をする。そうすると、ただ辛いという想いから少し前向きに、「あぁ、こういうことがやりたいんだな」って理解できる。それによって自分自身の気持ちも楽になれるんだって。
一つダメなところがあってその結果、関連する全てがダメであったりしても、理解することによって他のものをもっと良くすることができるきっかけになるんです。それが重要なことなんだと。でも、最後の最後までわからないまま、ということも結構あるんですけれどね(苦笑)。
もちろんそういった全体を見る視点というのは、トップの人間は必ず持っておかなくてはいけないんですけれど、作業をする人間全てがそれを意識することによって、ゲームの質の向上につながっていきますので、そういった視点は制作に携わる人間は必要だと思っています。

─今はすでに夢の中を走っている─
■樋口さんが今後やっていきたい夢や目標ってありますか?
樋口:今やっている仕事自体が夢をひた走っているようなものです。ゲームを創る仕事を続けていると、ドット絵がポリコンになったように技術の進歩があって、どんどんやることが変わってくることで、新しい発見があったり、新しい価値観を見つけるということがすごく楽しいんです。今やっていることが夢になるのではなくて、今はすでに夢の中を走っているという感じなんじゃないかって思います。
あとは、僕は絵が好きでゲームを創っているわけですが、絵で挫折しちゃうと、僕自身も挫折しちゃうんです(苦笑)。だからゲーム以外のものでもたくさんのものに興味を持って、たくさんのことにチャレンジして、それらと並行にゲームという夢をひた走ることが重要なんじゃないかなって思います。
■それでは最後に、樋口さんにとって“仕事”ってなんですか?
樋口:生活の糧であり、趣味の延長かな。絵を描くのが好きでこの会社に入ったので、仮に、この会社を辞めることになって次の職を探すことになったとしても、やっぱりゲーム会社かなって。そんなゲームを創るというクリエイティブな仕事が気に入って、この仕事に就いているわけですから。そういった意味では、僕は恵まれた人間なのかもしれませんね。
趣味の延長だって言いましたけれど、たくさんの人にゲームをやってもらって、たくさんの人に評価してもらったら、それはすごい嬉しいですね。それに代わるものはないと。だから次の夢として、もっともっとたくさんの人にやってもらって評価してもらえるゲームを創ってみたいですよね。

(取材後記)
ゲーム業界というのは、多くの方が憧れる業界の一つだと思うのですが、樋口さんの話を聞いていると、クリエイターとしてどんな能力が必要なのか、どんな仕事の取り組み方をしたらいいのか、見えてくるのではないかと思います。
さて、vol.19では、ゲームクリエイターから現在は総務部という新しい仕事に携わっておられる鈴木浩信さんに、その仕事観を中心にお話を伺っていきます。お楽しみに!!
株式会社インテリジェントシステムズ
〒605-0983 京都市東山区福稲上高松町60
TEL.075-533-6100
FAX.075-533-6116
HP http://www.intsys.co.jp/
その想いがゲーム制作の原動力となっているゲームクリエイターの話
【インタビュー】
樋口雅大
さて、今回から2回にわたり、株式会社インテリジェントシステムズのゲームクリエイターである樋口雅大さんと鈴木浩信さんに登場していただきます。こちらの会社では、任天堂のゲームソフトを開発しており、お二人とも、みなさんがよくご存知のゲーム制作に関わっているんです。ブログをご覧になっている方の中にも、ゲームを創る仕事に興味のある人はいらっしゃるのではないでしょうか?それでは、お二人の話を伺っていくことにしましょう。まず最初は、グラフィックを手がける樋口さんのお話からどうぞ。

─ゲーム会社というのが自分のやりたい職業であり、自分の条件に合致する仕事なんだって、急にカッとひらめいて─
■樋口さんは大学では映像の勉強をされていたわけですが、就職先にゲーム開発会社を選んだのはどうしてだったんですか?
樋口:僕がゲーム関係の会社に入るきっかけとなったのは、就職関連の雑誌だったんです。偶然見たその雑誌に大手ゲーム会社の募集の告知があって。それを見るまでは、僕自身はゲームというものに、全然興味を持っていませんでした。
というのも、ゲームそのものは自分の周りにたくさんあって僕もそれで遊んでいたけれど、それを誰かがつくっているという感覚が全然なくて。
例えば漫画ならタイトルと同じように作者名が前面に出るけれど、ゲームで制作者が表立って出てくるものってほとんどなかったし、最後のエンドロールだって映画と同じようにサラッと流れていって、目に残るようなものではありませんでしたから。だからゲームをやって楽しかったなぁというところで終わってしまって、その裏にある開発者の存在まで意識が及んでいなかったんですね。
僕自身はすごく絵が好きで、絵を描きたいという想いが強かったので、絵を描く仕事には就きたいと思っていたんです。しかし、どんな絵を描きたいのか、またどんな絵を描けばいいのか漠然としていて。だから就活の最初の頃は出版関係の営業とか、そういった職種をちょこちょことまわってましたね。
そんな時にその雑誌を見て、「これって僕のやりたかった仕事なんじゃないか」って思ったんです。ゲーム会社というのが自分のやりたい職業であり、自分の条件に合致する仕事なんだって、急にカッとひらめいて。それから就活もガラッと方向転換して、ゲーム会社一本に絞って受けまくったんです。
■それではゲーム会社に行こうと思ったのは、就活を始めてからだったんですね。
樋口:そうですね。絵はそんなにうまくはなかったんだけど、小さい頃は広告を見るのが好きで。というのも広告の裏が白いものを見つけるとすごく嬉しくって、いっぱい落書きしてね。その時は漫画のキャラクターなんかを描いたりしていて、「将来は漫画家になるぞ」とか、「アニメーターになるぞ」って夢はあったけれど、実際にその道に行くのはすごく難しくて。
そっちの世界の現実が見えてくると、「もしかして自分のやりたいことじゃないんじゃないか」、「自分には難しいんじゃないかって」気が引けていたところがありました。それがその雑誌には企業から門戸を開いていて、受ける分にはどんな人でもOKですよってオープンな状況があって。だから見た瞬間、「あぁ、これだよ」って(笑)。
■樋口さんの頭には、まず「絵が描ける仕事」というのがあったけれど、自分では何が描きたいのかわからないという状況があって、そこでその就職情報誌がきっかけで目覚めたと。
樋口:絵は描きたいのに、何を描いたらいいのかわからないという悶々とした状況で。でも就活の時期はどんどん迫ってくるし。だからとりあえず、こんなところも受けてみよう、あんなところも受けてみようって受けてみるんだけど、担当者には僕の迷いが見透かされていてね。「キミってこういう業界には向いてないんじゃないの」って言われたりして(笑)。「いや、でも頑張りたいんです!」って話はするんだけれど、自分自身でも確かに違うと言われたら違うような気がするし・・・。
そんな違和感を感じながら就活していたのが、パッと開けた感じでした。だから、あのまま就職情報誌を見なかったら、どこかの会社で営業をしていたかもしれませんね。
■そうやってゲーム会社を受けまくったなかで、どうして現在のインテリジェントシステムズさんに決められたんですか?
樋口:一言で言ってしまえば、一番最初に受かったから。もちろん、不採用だったところもあったし、結果待ちや面接待ちという会社もいくつかあったんだけれど、そのなかで一番最初に採用が決まったところだし、それならここでお世話になろうと。
■ある意味、男らしい決断ですね(笑)。迷いはなかったですか?
樋口:そのときはあまり迷いはありませんでした。勢いだけだったと思います(笑)。とにかく、「やったー!ゲーム会社に受かったぜ!よし、ここだっ!!」って気持ちだけで決めたのがこの会社に入るきっかけだったんです。

─ゲームってキャラクターと背景だけ描いていたらいいんじゃないのって思って入ったんですが、実際はそうじゃないってことに気がついて─
■絵を描きたいという想いがあってこの会社に入られたわけですが、最初から思い通りに絵を描く仕事に就くことができたんですか?
樋口:デザイナーとして入ったので絵を描くチャンスは最初からあったんですけれど。絵と言っても紙に描くわけではなく、パソコン上で点を打っていくいわゆるドット絵を描いていくんですが、これが苦労しましたね。今まで全く経験したことがない描き方だったので。自由に描いているように見えて実際は色数や絵の大きさ等、すごく多くの制限の中で描いているんですよ。
それにパソコンを全然知りませんでした。当時はまだウィンドウズもなく、先輩から「これ読んどけ」とMS-DOSの本を渡されて。とりあえず10個の単語を覚えたらなんとかなるからって(笑)。一夜漬けで覚えたり、手探りでやってみたりと大変ではありましたが、いろんなことを覚えるのは好きだったんで、それはそれで楽しかったですね。
本を読んでいるとなんとなく理解できてくるんで、それでわかったドット打ちを一生懸命やってました。最初はすごい下手くそだったんですが、3ヶ月後ぐらいには「お前、ドットがうまくなったな」なんて言われて。「実は裏では、お前は下手だなって笑っていたんだよ」なんて先輩の言葉にショックを受けたんですが、ショックと同時にそういう風に言われるのは自分が上達した証拠だと。そう思うと嬉しくて、「そうだろ、うまくなっただろ」って思いながらやってましたね。
これは今でも新しく入ってきた子にはよくあることなんですけど、ゲームというのはキャラクターと背景が組み合わさってできるんですが、実際は文字を打ったり、ウィンドウの情報画面であったり、爆発とかのエフェクトであったり、フォントを作ったり、画面の中にある全てのものを制作していかないとダメなんですね。
ゲームってキャラクターと背景だけ描いていたらいいんじゃないのって思って入ったんですが、実際はそうじゃないってことに気がついて、それにすごい衝撃を受けた覚えがあります。
最初は「文字なんて打てないよー」と怖じ気づいたりしていたんですが、やってみると制限がある中の作業というのが逆に楽しくて。これは面白いなと。今まではキャラクター!キャラクター!キャラクター!とそればっかりだったのが、エフェクト作るのも楽しいし、ウィンドウ作るのも楽しいし、文字を打つのも楽しいって。こうやったらきれいにできるじゃないかっていう新しい発見がどんどんあってね。
ゲームというのはプログラムの集合体なので、グラフィックでもここをこういじるとこんな効果がある、なんていう発見があったりするんです。それがわかると、「これは、おもしれー!!」って。そういうことを見つけるのがすごく楽しくて。
最初はキャラクターのことしか頭になくて、それが全然違うんだよってカルチャーショックを受けるんだけど、覚えるのがすごく楽しい時期だったから、どんどん吸収していって、どんどん仕事したいって前向きな気持ちで仕事をしていました。

─何でも面白いやって興味を持つことができる好奇心を持っている人が向いている仕事─
■自分でゲームを作ったことのある人ならゲーム制作の過程もわかっているんでしょうけど。そうじゃないと自分がキャラクターを生み出してゲームにしたいって思って入ったのに、実際は地道な作業ばっかりで思っていたのと違う!ってギャップを感じることってないのかなって思っていたんですよ。
樋口:これは性格と言ってしまえばそれまでかもしれませんね。必要なスキルとしては、ゲームはいろんな要素の集合体であるので、もちろん技術も必要なんだけれど、協調性であったり、ずっと続けていくならば「なんでも突っ込みたがる好奇心」が大事。何でも面白いやって興味を持つことができる好奇心を持っている人が向いている仕事なんじゃないかなって思います。
実際にエフェクトだけを創る絵なんてあり得ないんです。そこでいろいろな担当をして新しい発見が起きるのは当然のことだし、これからも絶対そういうことはあると思うんだけれど、それを楽しんでできる人というのが、ゲームクリエイターとしてやっていく条件になるんじゃないかなって思いますね。
■最初は下手だって言われながら、ドット絵を描くことから始まって、現在に至るまでいろんなゲームの制作に携わってきたと思うんですが、その歩みを振り返ってみて、ご自身はどう思われますか?
樋口:現在があるのはこれまでの結果でもありますし、僕個人としては、こんなことを言うと会社の人に怒られるかもしれないけど一作業者でもありたいなと思っているんです。長く仕事をしているとゲーム制作の仕事だけじゃなく会社的要素…、例えば入社希望者の面接官であったり、ゲーム制作に入る前に予算の認識など、そういったことを色々勉強させてもらっていくことで自分ができる範囲でそういう仕事も楽しいかなって思ってます。
元々、知りたがりですから、これまでタッチしなかった部分を知るのも面白いんですよ。ある意味、いろんなところに楽しさを見つけていくことが重要なのかなって思いますね。
この仕事は本当に楽しくてやってきたわけですが、しかし時には挫折することもあるんです。たとえば僕はグラフィックを担当していますから上司に僕が描いた絵を見せるんですけど。「こことここがダメだ」って言われたとすると、その部分を直してまた見せる。すると今度は「全然ダメだ、直ってない」って。
その修正項目が理解できるものならいいけれど、何を言っているのかすらわからないってことも(苦笑)。相手が何を求めているのか全然理解できなくて、それで悩むこともありました。絵ってすごいしんどいなぁと思ったり、僕より上手い人もどんどん入ってくるんで、プレッシャーを感じることもあるし。
そういった中で思ったのは、絵の一部分が悪いということではなくて、ゲームの中でその絵(キャラクター)がどんな役割を担っているのかということを考えなければならないということ。単に修正するのではなく、一歩引いたところで、全体を見るという視点が必要なんだってね。その一歩引いた視点というのは、自分のポジションや、どういうものを創っていかなければならないのかを再確認するためには必要なんです。
だから、話は半分だけ聞いて。もう半分はもう一歩下がって、どういうことを狙っているのかを理解する努力をする。そうすると、ただ辛いという想いから少し前向きに、「あぁ、こういうことがやりたいんだな」って理解できる。それによって自分自身の気持ちも楽になれるんだって。
一つダメなところがあってその結果、関連する全てがダメであったりしても、理解することによって他のものをもっと良くすることができるきっかけになるんです。それが重要なことなんだと。でも、最後の最後までわからないまま、ということも結構あるんですけれどね(苦笑)。
もちろんそういった全体を見る視点というのは、トップの人間は必ず持っておかなくてはいけないんですけれど、作業をする人間全てがそれを意識することによって、ゲームの質の向上につながっていきますので、そういった視点は制作に携わる人間は必要だと思っています。

─今はすでに夢の中を走っている─
■樋口さんが今後やっていきたい夢や目標ってありますか?
樋口:今やっている仕事自体が夢をひた走っているようなものです。ゲームを創る仕事を続けていると、ドット絵がポリコンになったように技術の進歩があって、どんどんやることが変わってくることで、新しい発見があったり、新しい価値観を見つけるということがすごく楽しいんです。今やっていることが夢になるのではなくて、今はすでに夢の中を走っているという感じなんじゃないかって思います。
あとは、僕は絵が好きでゲームを創っているわけですが、絵で挫折しちゃうと、僕自身も挫折しちゃうんです(苦笑)。だからゲーム以外のものでもたくさんのものに興味を持って、たくさんのことにチャレンジして、それらと並行にゲームという夢をひた走ることが重要なんじゃないかなって思います。
■それでは最後に、樋口さんにとって“仕事”ってなんですか?
樋口:生活の糧であり、趣味の延長かな。絵を描くのが好きでこの会社に入ったので、仮に、この会社を辞めることになって次の職を探すことになったとしても、やっぱりゲーム会社かなって。そんなゲームを創るというクリエイティブな仕事が気に入って、この仕事に就いているわけですから。そういった意味では、僕は恵まれた人間なのかもしれませんね。
趣味の延長だって言いましたけれど、たくさんの人にゲームをやってもらって、たくさんの人に評価してもらったら、それはすごい嬉しいですね。それに代わるものはないと。だから次の夢として、もっともっとたくさんの人にやってもらって評価してもらえるゲームを創ってみたいですよね。

(取材後記)
ゲーム業界というのは、多くの方が憧れる業界の一つだと思うのですが、樋口さんの話を聞いていると、クリエイターとしてどんな能力が必要なのか、どんな仕事の取り組み方をしたらいいのか、見えてくるのではないかと思います。
さて、vol.19では、ゲームクリエイターから現在は総務部という新しい仕事に携わっておられる鈴木浩信さんに、その仕事観を中心にお話を伺っていきます。お楽しみに!!
株式会社インテリジェントシステムズ
〒605-0983 京都市東山区福稲上高松町60
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